手に持つのは、へら。
独特なカーブを描くへらを器用に操りながら、
きらびやかな布の端を人形の胴体に彫った溝に埋め込んでいく。
埋め込むことを「きめこむ」とも言う。
そこから木目込み人形の名前はついた。
胴体に刻む溝の位置、そして細かく区切った面に、
どんな生地を木目込んでいくかで、
できあがりの印象はまったく変わる。
木目込み人形は、雛人形などの節句人形に多く見られる。
人日、上巳、端午、七タ、重陽の五節句に
繁栄と無事を願う慣習は、少しずつ日本人の暮らしから離れていき
木目込み人形に触れる時問も少なくなってきてしまった。
そしていま、この手が木目込むのは、
右手をあげて福を呼ぶ招き猫だ。
人々のさまざまな顧いを、きらびやかな布とともに埋め込んでいく。
繁栄と無事を願う、人々の気持ちをこの手が形にしていく。その手は、馬の毛を植えていく。
親指と人差し指で毛束をひとつかみすると、自ら木地に開けた穴に植え、
その根元を裏から「引き線」と呼ぶステンレスの針金で固定していく。
隣の穴にもまた毛束が植えられ、その根元が固定されていく。
その隣の穴もまた。人の手による完全な工程。
「手植えブラシ」はなぜ、手間暇をかけた手植えにこだわるのか。
手植えは毛が抜けにくいなど、丈夫で長持ちする。
それは、動物からいただいた 恵みをきっちりと使い切ることにもつながる。
動物の毛は、馬、山羊、豚などの種類によって太さ、コシが違う。
また同じ馬でもたてがみなのか、尻尾なのかなど、
場所によっても特長が違う。
その特長を見極め、用途に合わせて選び感謝の気持ちを込めて大切に使う。
「手植えブラシ」には、優しさがある。
毛束をつかむ、その手にも優しさがある。指し示しているのは、業界の進むべき道。この手は需要を創り出し、
硝子産業の発展を牽引する。近年、多くの産業がそうであったように
機械化、量産化、そして輸入品の増大が日本の硝子産業を圧迫してきた。
メーカーや工場が撤退や廃業をよぎなくされ、また問屋の多くも姿を消した。
市場の縮小は、硝子産業を支える職人の仕事量の縮小につながる。
このままでは、日本の硝子産業は衰退してしまう。
危機感を抱いたとき、モノを右から左に流す問屋ではなく、積極的に
モノづくりに関わる「硝子のプロデューサー」へのシフトチェンジがはじまった。
問屋として80年余の時間で育んできた職人とのネットワーク、
市場を見極める目をベースに、斬新なデザイナーの発想、
異業種の知見や技術を融合させたモノづくりがスタートした。竹べら(ホセ)の先には、釉薬が載っている。その手は慎重に、
銀のベースに釉薬をもっていく。液状の釉薬が銀のベースにとどまる。
これを乾燥させ、焼成。また釉薬を盛り込み、乾燥、焼成することを数回繰り返し、
釉薬はベースに定着する。最後に表面を0.05ミリ研磨すると、
宝石のように美しい七宝が現れる。そして今、この七宝を知り尽くした手が挑むのは、
「透胎七宝」。透かし彫りベースには、花弁の意匠が刻まれている。
デザイナーが望んだのは、「透胎七宝」の透明感で一輪の花を表現すること。
細長い花弁、丸みを帯びた花弁、そして真円の花弁。釉薬を盛り込む手が、
真円の花弁の前で止まる。表面張力を巧みに操り、釉薬を真円に盛り込む。
焼成の際にかかる張力も予測しながら盛り込む。
困難と思われた真円への定着が成功する。新しい世界が、花開いた。- 木内藤材工業
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- 硝子工房彩鳳
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- 木本硝子PICK UP
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- 指物益田
- 長澤製作所
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- 根岸産業
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- 畠山七宝製作所PICK UP
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- 二葉
- ※価格はすべて税込です。
- ※画像は一部イメージです。


東京の「伝統工芸品」は、進取の精神に富む江戸職人の匠の技と心意気によって磨かれ、洗練され、そして庶民に愛されて連綿と受け継がれてきました。 『東京手仕事』は、そんな伝統の技に光を当て、匠の繊細な「手仕事」の魅力を国内はもとより世界に発信していく取組です。



