<ベル・フルール虎ノ門店>にて、
今野亮平さん。-
今野亮平 (こんの りょうへい)
<株式会社ベル・フルール>代表取締役社長/<ベル・フルールフラワーデザインカレッジ>副学長
一級フラワーデザイナー/一級フラワー装飾技能士/ディスプレイクリエイター/公益社団法人日本フラワーデザイナー協会本部講師/韓国LG設立大学「cheonan yonam college」講師/大東文化大学オープンカレッジ講師/東京テクノホルティ講師/三越カルチャーサロン講師/ジャパンディスプレイクリエイター講師
<工房 利八>を主催する、海老沼惠也さん。
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海老沼惠也 (えびぬま けいや)
<株式会社ワークステーション>代表取締役/一級建築士/3・4・5軸制御3次元レーザー加工機を独自開発。
- 2015年
- <工房 利八>を設立。「昔の職人の技を現代の職人が巧みな技術で今に蘇らせる」をテーマに創作活動開始。
- 2016年
- 超立体桐箱が「The Wonder500」に選定。
フランス・パリのセレクトショップ「maison Wa」にて常設展示。
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プリザの構成について解説します。浮世絵の波に対し、プリザの苔は大地のイメージです。苔のアレンジは、奥に「主」になるグループを置き、右手前に「対向」するグループを置き、左手前に「寄り添う」グループを置きました。北斎の荒々しくも美しい波に対し、プリザの苔の瑞々しさを。お互いが引き立たせてその世界観を創っています。尚、苔には思わず水を与えたくなりますが、そのまま飾っていただければ大丈夫です!
ダイナミックな波の動きと大地を表す苔、それらを包み込む天然の桐箱…。雰囲気ありますね。
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最近海外でデモンストレーションやセミナーをさせていただいていることでより考えさせられること、古来から続く日本の美とは何か。花だけでなく建築、美術、立ち振る舞い等を学び、今の私が辿り着いた答え、日本の美というのは、それは「余白の美」だということです。つまり「引き算の美」です。浮世絵もそうですよね。描かれていない部分にこそより深い意味がある。この題は「富嶽三十六景・凱風快晴」。私は北斎が「赤富士」を際立たせるよう左右に広がる空と雲、余白に意識を入れていたと解釈しました。
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<凛 by ベル・フルール>のデザインを考えている時、ふとある風景を思い出しました。祖父母の家です。軒垣から見える風景、襖から見える風景、縁側から見える木々の先にある風景。どれも直線的には見えない、「垣間見える風景」です。
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3、4点目の作品は同じサイズです。サイズも日本の美意識を表現するという点は一緒。しかし、構成は「引き算の美」と「足し算の美」という対照的な商品を皆さまにご覧いただきました。<凛 by ベル・フルール>の世界観、可能性を感じていただければと思っています。
同じサイズで、こんなにも世界観が違うのですね。「引き算」も「足し算」もどちらも素晴らしく、目移りしてしまいますね。
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こちらは、葛飾北斎の諸国滝廻りの中でも特にインパクトのある「下野黒髪山きりふりの滝」という浮世絵を選びました。ダイナミックな滝が流れ落ちる風景の中に生き生きとした苔をアレンジしたいと思い工夫しました。
数々の賞に輝く今野亮平さんを擁するフラワーデザインカンパニー<ベル・フルール>から、新しい発想のプリザーブドフラワー<凛 by ベル・フルール>の誕生です。
<工房 利八>が独自の技術と職人の手技で作り上げた浮世絵桐箱と、花を通して日本人の美意識を追い求める今野亮平氏との比類ないコラボレーション。
時を超え、言葉を超えて、「日本の美」を表現する和の逸品、<凛 by ベル・フルール>を今、いち早くご紹介いたします。
独自の技術による浮世絵桐箱と融合した、
「日本の美意識」溢れるプリザーブドフラワー。

はじめまして。今日はよろしくお願いいたします。早速ですが、<凛 by ベル・フルール>が誕生したきっかけをお聞かせください。
今野さん(以下/今野):
こちらこそ、よろしくお願いいたします。プリザーブドフラワー(以下/プリザ)は、元々フランスで生まれましたが、この十数年の期間でテクニックでも社会での認知度でも、日本が世界ナンバーワンになっています。最近では中国、韓国、中東を筆頭とした世界が日本のプリザを注目している今日です。
日々、プリザの認知・需要が現在のライフスタイルに取り込んでいただけていることを実感している中、私は日本人の持つ美意識、日本人の技術に溢れたプリザを作りたいと考えていました。そんな時、偶然あるイベントにて、素晴らしい「浮世絵桐箱」に出会いました。それが、海老沼惠也さん率いる<工房 利八(こうぼう りはち)>による、独自のレーザー加工技術を使った作品だったのです。衝撃を受けた私は、翌日自ら車を飛ばして工房へお邪魔してしまいました。

海老沼さん(以下/海老沼):
私達は最先端のレーザーを使った加工技術のプロとして、求められれば求められただけお応えしようとする社風です。出会った翌日に工房に飛んでこられた今野亮平さんの情熱溢れる姿勢に、ワクワクしたことを覚えています。
その出会いから約1年の制作期間を経て、<凛 by ベル・フルール>が誕生したのですね。
はい。今回は花の部分だけではなく箱もデザインさせていただきました。箱は本来、何かを入れるためのツールとなります。<凛 by ベル・フルール>においては、箱そのものに自立した存在感、サプライズ感を注入してみました。日本人が以前には床の間等、日常生活に取り入れていた「平面と立体」の美、例えるなら「掛け軸の前に一輪の生け花を活ける」というような美学を、桐箱の工夫で実現したいと考えました。
このアイデアを実現させた<工房 利八>とのコラボは1+1が2ではなく、100にも200にもなりました。釘などは一切使わずに、箱と蓋の両方に溝を削るだけの工夫で箱の蓋を美しく自立させたい等の難題を、卓越した技術でクリアしていただきました。
桐の木は半年かけて乾燥させました。天然木ですので一点一点個性が違います。そこが面白さでもあり、苦労した点でもあります。桐箱の製作は、<工房 利八>の主要メンバーである群馬県伊勢崎市在住の伝統工芸士、関口勝三郎氏の仕事です。
今野さんの要望はいつもミリ単位のものです。そのためこちらも丁寧に、何レイヤーにも分けてレーザーを当てながら作業を進めます。1回のレーザーではこのような浮世絵の深みは出せません。レーザーを当てた後、最後に特殊なインクジェットを使って色付けを行う等、通常の作業では考えられない手間暇かけて今野さんの要望を形にします。
浮世絵とプリザーブドフラワーのマリアージュ。
裏テーマ「トランスフォーム」による美しきサプライズ。
今野さん、<凛 by ベル・フルール>の中から何点か選んで、ご紹介をお願いします。
目を引く幾何学模様の箱を開けると…、そこには「驚きの世界」が存在します。



まず、初めにご紹介する商品は、テストマーケティングで一番人気だったデザインです。こちらの商品は、サイコロ型の深い箱に刻まれた幾何学模様が蒼色と共に輝いています。そして蓋を開けると、裏蓋には葛飾北斎の「甲州三嶌越」が目に飛び込んでくる仕組みです。つまり、蓋が閉じている時と開いた時の違い、「トランスフォーム(変身)」が、<凛 by ベル・フルール>のもう一つのテーマなのです。彫りでできた幾何学模様は「唐花丸」と呼ばれ、平安時代、狩衣に使われた文様です。

桐箱の中には、北斎の浮世絵に繋がるような造形をプリザーブドフラワーで表現。まさに、平面と立体です。「青富士」の手前に生えている大木の絵に続くように、輪切りにした白樺の小枝を並べました。そして「青富士」と連動するロイヤルブルーのプリザローズ、その富士山の裾野のような豊かな表現を助長させる苔。今、苔のプリザは大人気です。
温故知新、伝統と現代の技術の融合を驚きと共に感じます。浮世絵の「青富士」と青いバラ、そしてプリザの苔……。本当に玉手箱のようですね。
次は、天然桐、本来の素材感を大切にした、五感に響く商品です。
立体に飛び散る「波の滴」を感じる。「天然桐の素材感」が引き立つ一品。



続いて、浮世絵「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」の波の美しさ、北斎の筆の力強さを生かすようペントレー型を採用。大きな蓋を自立させるために、先程の商品とは溝の入れ方も変えています。波の奥に見える富士山の存在を際立たせると共に、桐本来の美しさを生かすデザインを追求して、浮世絵のトリミングには細心の注意を払いました。波の滴一つひとつすべてに、レーザーを使って精巧に作り上げた凹凸が注目であり、その迫力は絵画にも勝るものではないでしょうか。
このデザインにおける浮世絵レーザー加工は1面のみです。それは、長く手間暇を掛けて国内で育てられた一期一会の桐の木の表情と、においと温もりを感じていただきたいからです。天然の持つパワーはデザインと共に日本人だけでなく世界中の方々へも共感いただけると思っております。

3点目は、余白の美、静と動を力強く表現したデザインです。
「赤富士」の先にある、「コントラスト」と「引き算の美」の追求。




フラワーデザインは首尾一貫、「コントラスト」を大切にしました。まず色彩。赤と緑は反対色、補色の関係です。次はキャラクター。植物形態にて苔は「静」の存在、一方バラは「動」の存在。北斎の力強さに負けない存在感を表現させていただきました。
朝焼けの富士山の透明感が感じられるように、桐の素材の見せ方、調色を緻密に行いました。
伝統工芸の「組子細工」から覗く、「垣間見る」世界観。




ここに継承される文化がある、日本人としての美意識のDNAを表現する挑戦をしました。垣間見せる「組子細工」の文様は<工房 利八>にお任せしました。蓋の格子柄は、レーザー技術をフル活用して、昔から建具の装飾に使われていた「組子」の文様を表現していただきましたが、ここから何回やり取りをしたことか。レーザー=焼く。作業の性質から焦げが影となる。影の強度、陰影感に最後までこだわりました。
垣間見える先にあるお花の部分は「御節料理」をデザインの起源にしました。よって、バラはあえて使わず、ミニダリア、菊系のピンポンマム、ルスカスなどを使いました。和装用のボールブーケでよく使われる素材です。また、「疎」と「密」を対照させるようにして、アイビー、ライスフラワー、アジザイなどでグラデーションを作っています。加えて、素材感の違うレモンリーフを加えて、高低差を出しました。如何に平面を立体にするか、を大切に表現しています。

最後に、壁掛け専用デザイン。こちらの作品は完成まで苦労しました。力作です。
葛飾北斎の滝が現代に蘇る、迫力溢れる壁飾り。

絵画だけでは出し切れない滝の飛沫が飛び出て来るような迫力やパワーを、1ミリも揺るがせにしない苔のアレンジで表現していただきました。今野さんの真摯な制作姿勢を目の当たりにして、正直、作りながら感動しておりました。

苔と浮世絵との融合具合が絶妙で、「日本の美」がこの一枚の中に詰まっているような気がします。
最後に、お二人から、<凛 by ベル・フルール>への想いをお話しください。
<凛 by ベル・フルール>を作り上げながら、今野さんの熱き想いと一つになって、「共振」ができたと感じています。私達のレーザー加工技術をアレンジメントとデザインで引き出していただきました。お客さまに愛されながら、進化し続けるシリーズになって欲しいと願っています。
私も、その道のプロフェッショナルと共同作業できる幸せを痛感しました。フラワーデザイナーとしてのプライドと、レーザー加工技術の職人としてのプライド。両者のぶつかり合いやせめぎ合いから、想像以上のものが形としてできあがった。ほとばしるようなパワーが生まれたのは、双方の抱いていた熱量が同じだったからでしょう。
ひょっとしたら、江戸の絵師と職人の関係も似たようなものだったかもしれませんね。どこまでも本物を追求しながら、魂を注入していく作業は喜びが大きく、そのような意味では、江戸時代のクリエーターたちの情熱と反響し合える……東京五輪2020が近づく平成の今、時空を超えた出来映えになったのではないかなと思っています。このプロセスや思いを伝統ある日本橋三越本店の「越後屋オンライン」に掲載いただけたことに感謝です。

「洋」のイメージの強かったプリザーブドフラワーが、ここまで「和」の世界観を持つことができたその裏側に、お二人の並々ならぬ情熱の存在を感じました。<凛 by ベル・フルール>のこれからが、本当に楽しみです。今野さん、海老沼さん、今日はありがとうございました。
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