
大正5年(1916年)、初代能作兼次郎氏は高岡の地で、青銅製仏具を手がける<能作>を創業。2代目能作春一氏は、鍋や釜などにも製造を拡大。戦後の需要に伴い、鋳物を日常品に持ち込みました。やがて3代目能作佳伸氏の代には、新たに花器や茶道具などインテリアの鋳造にも積極的に取り組み、鋳物という素材をより日常に引き寄せたのです。こうして仏具・茶道具・花器を三つの柱に据え、近年はテーブルウエアや建築鋳物を通じて、伝統工芸「高岡銅器」の魅力をいまに伝えています。

銅合金鋳物の産地として名高い、富山県高岡市に本社工場を構える<能作>

記念すべき百貨店進出一号店として、2009年に日本橋三越本店に登場

4代目 能作 克治氏
400年の歴史の中で、数度の転換期を迎えながら時代にふさわしい鋳物の製造に取り組んできた<能作>。4代目能作克治氏は、元・新聞社勤務のカメラマンという異色の経歴の持ち主です。入社後、鋳物職人としてキャリアを重ね、素材の本質を鋭く突く審美眼に裏付けられたものづくりへのこだわりから、伝統工芸の世界にモダンなデザインの輝きを吹き込みました。そして、オリジナル商品の製造という先代からの夢を実現させて、東京・表参道のギャラリーなどに新作発表の場を広げ、幅広い分野から注目を集めています。

「日本デザインコミッティ」のコレクションに選定された、真鍮の風鈴
あるとき、展示会向けに製作されたハンドベルが、一人の販売員の「風鈴の方がお客さまに馴染みがある」という声から風鈴にアレンジされ、これが夏場のロングセラー商品となりました。また、あるときは「身近で使える金属製の食器はないの?」というお客さまの声を受け、錫100%のプレートが誕生。
能作克治氏は言います。「伝統は守るものではなく攻めていくもの」と。こうして、素材とデザインをキーワードにデザイナーとコラボレートしながら、食器やインテリア雑貨、家具や照明器具、建築金物まで新たな伝統の創造に挑戦し続けています。