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木内友秀
- 1948年
- 東京生まれ
- 1988年
- 東京都伝統工芸品に指定される。東京都伝統工芸品第二回、三回コンクールで優秀賞を受賞。
- 2004年
- 第29回全国伝統工芸品コンクールで入賞。
- 2008年
- 東京都伝統工芸士に認定される。東京都伝統的チャレンジ大賞にて奨励賞を受賞。文京区技能名匠に認定される。
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海外でも、籐製品は古くから使われていたのでしょうか。
そのようです。ルイ13世時代のフランスで作られた籐椅子は座り心地がよく、貴族の間で大人気になったそうです。その後「太陽王」と呼ばれたルイ14世の時代に、籐を使った豪華版の椅子が作られたと聞いています。原材料の籐が豊富に東南アジアからもたらされたからでしょう。
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新作で、特に好評な製品はございますか。
こちらの「正座椅子」が好評です。息子の意見を取り入れて作り始めたところ、正座の苦手な方にとても喜ばれる製品になりました。きっちり目が詰まってとても丈夫な「網代編み(あじろあみ)」という編み方を採用しています。
進取の精神に富む江戸職人の技と心意気によって磨かれ、庶民に愛されてきた東京の伝統工芸品。「東京手仕事」は、そんな伝統の技に光を当て、匠の手仕事の魅力を国内と世界に発信していく取り組みです。今回は、東京・千石に工房を構える<木内籐材工業>による「籐と和紙のうちわ」をご紹介いたします。若々しい感覚が加わってさらに輝きを増した、伝承の技にご注目ください。
自然からの贈り物、「籐」を使った伝統工芸。

2017年夏、「東京手仕事」がご紹介するのは「籐と和紙のうちわ」です。こちらを制作された<木内籐材工業>の二代目で東京都伝統工芸士である木内友秀(きうち ともひで)さんと、今回のプロジェクトなど、新しい感覚の「ものづくり」に次々に挑戦されている三代目の木内秀樹(きうち ひでき)さんに、お話をお伺いしました。

はじめまして。今日はどうぞよろしくお願いいたします。初めに日本での籐工芸の歴史を教えていただけますか。
木内友秀さん(以下/友秀):
古くから日本人と籐との関わりは深かったようです。例えば、平安時代に武具である弓や太刀などに使われていたという記録が残っています。一般に普及したのは江戸時代末期のことで、下級武士が内職として敷物やたばこ入れなどを作り始めたといわれています。
明治に入ると欧米から椅子の文化がもたらされ、ハイカラな家具として人気を集めました。第二次世界大戦で中断しましたが、その後GHQの要請で再開。高度成長期には籐家具ブームに乗って、私も本当にたくさんの籐工芸品を作りました。

こちらの工房の籐製品の原材料も、東南アジア産ですね。
現在使っているのは100%インドネシア産です。ボルネオ島のジャングルに、以前は私が、今では息子が伺って、自分の目で確認しながら買い付けています。野生のオランウータンが住んでいるような森の奥に鬱蒼と生えたゴムなどの大木……そこに蔓状の籐がダイナミックに絡まっている……そのような場所が原産地です。
日本にはどのような形で届くのですか。
元々は100mもある原木です。熱帯雨林ですから植物の成長が早く、7年で一人前になるといわれています。表面に生えた棘がすごいのですが、現地の方が鉈(なた)で切って、皮を剥いて、山から降ろし、水で洗う。その後よく干して原材料にするのです。日本に来る時には、8mくらいの長さになって運ばれて来ます。

こちらの工房を開かれたのは、友秀さんのお父さまですね。
そうです。父がここ千石に工房を開きました。当時はこの界隈もいろいろな種類の職人の工房で賑わっていたのですが、今は残念ながら私ども一軒になりました。
籐工芸の一番の魅力はどこでしょうか。
原木は一本一本自然のものですから、それを真っすぐにして材料を作って、割いたり巻いたりして形を作っていくのが私どもの仕事です。通常、籐は漂白しませんから自然そのものです。使い込んでいく内に飴色になります。その色がいいのです。中には糠で磨いて手入れをなさるお客さまもいらっしゃるそうで、ありがたいことだと思っています。
今現在、お仕事でのご苦労はどのようなことがありますか。
材料の調達から始めて、この「かがり用の籐の糸」を作るまでにたくさんの手間暇が掛かることが苦労といえば苦労でしょうか。その上、最近では「かがり用の針」を作る職人もいなくなってしまいました。今は在庫があるので何とかなっていますが、さまざまな心配は尽きません……。

和紙との組み合わせが開いた、籐工芸の新境地。
「籐と和紙のうちわ」を中心になって作り上げたのは、三代目の秀樹さんです。「東京手仕事」の特長である若手デザイナーとのコラボレーションが、秀樹さんの今回のチャレンジの強いモチベーションになったそうです。
最初に、デザイナーの方からプレゼンを受けたときの感想を教えてください。
どのようにして、その難局を切り抜けたのでしょうか。

和紙の扱いにも苦労されたそうですね。
籐に和紙を貼り終えてしっかり乾いた後、持ち手の部分に籐を巻くのですね。

完成した「籐と和紙のうちわ」をご紹介いただけますか。

よい籐工芸の製品が生まれる条件とはどのようなことだとお考えでしょうか。

素材のよさは、「籐と和紙のうちわ」にも活きていますか。

完成した「籐と和紙のうちわ」を持つ友秀さんと秀樹さん。小さい頃から工房の手伝いをしていたという秀樹さん。工房で働いていた職人の方たちに遊んでもらいながら仕事を覚えたのだそうです。今は親子で担当を手分けして、籐という強度の強い素材を活かした大きな家具からセンスのいい日用小物までを、精力的に作り出しています。今日は貴重なお話をありがとうございました。
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