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<ミキモト コスメティックス>の創業者である御木本幸吉は、うどん屋の長男として鳥羽に生まれ、青物商、穀物商、海産物商を手掛けるなかで真珠と出合い、「真珠を自分の手でつくること」を一生の仕事と決意します。その頃真珠は“奇跡のような偶然が重なって生まれる自然の産物”と見なされていましたが、有史以来の常識を見事にくつがえし、養殖真珠を発明したのです。ヨーロッパにおいて、養殖真珠はネガティブな受け止められ方をしたこともありましたが、さまざまな検査の結果、天然真珠と変わらないことが認められ、養殖真珠はその価値を高めることになりました。
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御木本さん(以下/御木本):
第二次世界大戦が起こり、奢侈品等製造販売制限規則と真珠の輸出停止によって装飾品の生産中止を余儀なくされます。そこで、かねてより“真珠を飲むと美と健康に輝く”という思想に着目していた幸吉は、真珠の研究を行い、御木本製薬株式会社を興すことを決意します。そこで真珠からカルシウムを取り出すことに成功し、昭和24年(1949年)に「真珠カルシウム」の製造販売を開始したのです。現在も、一部店舗にて真珠を粉末にした「真珠末」という商品があります。 - 1888年 真珠養殖開始
- 1893年 世界で初めて真珠の養殖に成功
- 1899年 銀座並木通りに御木本真珠店開店
- 1905年 真円真珠の養殖に成功
- 1940年 奢侈品等製造販売制限規則施行により真珠の製造販売を中止
- 1943年 御木本製薬株式会社を創立し、真珠カルシウムの製造販売を開始
- 1966年 パールコンキオリン(R)(※1)配合化粧品販売開始
ミキモトセイヤク化粧品誕生 - 1971年 「ムーンパール」シリーズ誕生
- 1985年 化粧品工場に超純水製造装置を設置
- 1992年 超高圧乳化装置を導入
- 2005年 銀座にエステティックサロンを併設した旗艦店
<ミキモト コスメティックス ギンザ>オープン - 2008年 ピュアパールミネラル(R)(※2)、パールコラーゲン(R)(※3)を化粧品への配合に成功
- 2010年 オーダーメイドコスメティックス パールイズム発売
- 2011年 真珠層形成に関与する情報取得に成功
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私どもはよく、“真珠のように美しい肌”という言葉を使います。それはつまり、輝くようなツヤとハリのある肌を指します。長年真珠を研究し続けてきた結果、真珠が美しく輝き続ける理由は「真珠層」にあることが分かってきました。幾重にも層が重なった構造からなる真珠は、その真珠層が規則正しく積み重なるほど美しく輝く真珠となります。そして人の肌もまた、キメが整うことで、健やかで美しい肌が保たれます。美しい真珠と健やかな肌とがもつ「美層」という共通性は、これからの研究の大きなテーマです。さらに、真珠は常に空気中の水分を真珠層に取り込みながら、水分量を保っていることが分かっています。この真珠特有の水分保持力もまた、肌が求める機能です。この機能こそが「美層」を支える輝くようなツヤの秘密だと考えています。
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製造期間はどの程度ですか?
約1週間ほどお待ちいただいております。
意外に早く届くのですね!
計測したデータを研究所と工場に送り、分析と製造を行います。すべて自社で行っているので、時間的なアドバンテージがあるのかもしれません。
真珠の成分の独自研究により生まれたのが<ミキモト コスメティックス>です。昭和46年(1971年)に最初の「ムーンパール」シリーズが発売されて以降、真珠の科学と先端の皮膚科学を融合したスキンケアシリーズとして、新しい技術や成分を加えながら何度もリニューアルしてきました。今回は、この独自路線を歩む<ミキモト コスメティックス>販売企画部の御木本光彦(みきもと みつひこ)さんに、これまでの歴史と先端研究まで、お話をお伺いします。
「世界中の女性を真珠で飾りたい」
創業者 御木本幸吉の想い
本日はどうぞよろしくお願いいたします。まず、<ミキモト コスメティックス>の創業者 御木本幸吉氏についてお聞かせください。

そこから化粧品の開発までのいきさつは、どういったことだったのでしょうか。

最初は「真珠カルシウム」からスタートしているのですね。
その通りです。それまでの研究のなかで、すでに真珠が約95%のカルシウムと約5%のタンパク質から生成されていることが分かっていました。そのわずか5%に真珠の美しさの秘密があるのではないかと考え、中国の古典「本草網目」に書かれていることや、クレオパトラや西太后などの真珠にまつわる伝説、そして真珠養殖に携わっている職人の手が一様にきれいなことなどのさまざまな要素から、化粧品の研究・開発に挑戦したのです。

HISTORY
※1 加水分解コンキオリン(保湿成分)
※2 真珠ミネラルで肌を整える成分(塩化Ca、塩化Na、塩化鉄、塩化Mg)
※3 サクシノイルアテロコラーゲン(保湿成分)
真珠研究から誕生した稀少な真珠由来成分配合の化粧品
真珠から得られる成分というのは、どのようなものがあるのでしょうか。
最初に、真珠が長い間輝きを保ち続ける理由が、真珠に約5%含まれているタンパク質(コンキオリン)が持つ保水力にあることを解明しました。これを肌に応用するため、真珠層から抽出したのが「パールコンキオリン(R)」です。人の肌に含まれる天然のうるおい成分と似た成分で、十数種類のアミノ酸を含み、肌にうるおいを与えます。<ミキモト コスメティックス>を代表するスキンケアブランドである「ムーンパール」シリーズは、この「パールコンキオリン(R)」を全アイテムに配合したスキンケアシリーズとして昭和46年(1971年)にスタートしました。

「パールコンキオリン(R)」は、現在の製品にも配合されているのですか?
はい。<ミキモト コスメティックス>のオリジナル成分としてリニューアルを重ね、現在も「ムーンパール」シリーズ全商品に配合され、欠かせない成分となっています。
こうした研究は、やはり製薬会社としてスタートした影響も大きいのでしょうか。
そうですね。1980年代のはじめ頃に、化粧品の安全性が社会問題化したことがありました。そこで<ミキモト コスメティックス>は、無香料、無着色のスキンケア製品を開発し、昭和60年(1985年)には超純水製造装置の導入を決めたのです。これは、超高密度フィルターによってろ過を繰り返し、不純物を限りなくゼロに近づけた水を精製する装置で、医薬品の製造工場などで使われているものです。この超純水を使用することで、できる限り配合成分をクリアな状態で肌に届けられるようにしています。また、原料の選定基準や製品の安全基準など、自社の審査基準の設定を高く厳しくしていることも、製薬会社だからといえるでしょう。また、平成4年(1992年)にいち早くナノテクノロジーに着目し、超高圧乳化装置も導入しています。
研究や技術開発の成果が、「ムーンパール」に反映されているのですね。
常に今できるすべてを製品に注ぎ込みたいという思いから、昭和46年(1971年)の発売以降、新成分の開発や新技術の導入などのたびにパッケージも一新し、リニューアルしています。超純水を導入した昭和60年(1985年)、ナノテクノロジーによって超微粒子化した成分を効率よく届ける「パールナノカプセル(※4)」を導入した平成16年(2004年)。そして、美しい真珠層を育むアコヤ貝の外套膜から保湿成分「パールコラーゲン(R)」を独自に抽出することに成功し、肌を整える「ピュアパールミネラル(R)」を開発すると同時にナノテクノロジー技術もさらに進化させた平成21年(2009年)。それぞれの年にリニューアルし、よりよい商品の形でお客さまにお届けしています。現在の「ムーンパール」シリーズは、平成27年(2015年)に誕生しました。弾力のあるハリ肌に着目して、整肌成分であるマリンハーブエキス MP(ヒバマタエキス)を配合し、先端技術を駆使しています。初代から数えて7代目になります。
※4 整肌成分(ジパルミ トイルヒ ドロキシプロリン、グリチルレン酸ステアリル)をコンキオリンペプチド(水溶性コンキオリンパウダー)のカプセル膜で包み込み、ナノサイズまで微細化
美しい真珠と美しい肌の共通性に着目
輝くようにツヤやかな“真珠肌”へ
<ミキモト コスメティックス>が考える“美しい肌”とは、どういったものでしょうか。

「ムーンパール」シリーズを象徴するアイテムをご紹介ください。
「ムーンパール モイスチャーリッチ ローション」です。ローションですが、とろりとした濃密なテクスチャーが特徴で、しかも肌に吸い込まれるようになじみます。



本当ですね。まるで美容液のような濃密さです。
2タイプありますが、よりとろりとしたノンアルコールの「まろやかタイプ」が人気です。
「ムーンパール」シリーズは全部で何アイテムありますか?
クレンジング、洗顔から化粧水、美容液、クリームまでのスキンケアアイテムに、パックやUV乳液を含む、10アイテムです。さらに、一緒にお使いいただきたい関連商品として、ローションの前にプレケアとしてお使いいただく「パール エッセンス リキッド-クリスタル(R)」や、とろみのある美容成分をたっぷり染み込ませたシート状マスク「エッセンスマスク LX」などもございます。


これらのアイテムにも真珠由来の成分は配合されているのですか?
もちろんです。それから、あまり知られていないことなのですが、実はスキンケア化粧品のオーダーコスメも承っているのですよ。
それは知りませんでした!どのようなものですか?
銀座直営店<ミキモト コスメティックス ギンザ>と日本橋三越本店 本館5階 リラクシング ラボラトリー<ミキモト コスメティックス>ショップでお申し込みいただけます。お肌の状態やお悩みをカウンセリングと機器を使って細かくチェックさせていただき、その方に合った配合のローションと美容液、クリームのセットをお作りするというものです。


最後に、「ムーンパール」の名前の由来を教えていただけますか?
諸説あるのですが、昔から“真珠は月のしずくである”といわれていたこと、そして“月の光に照らされて輝く真珠のような素肌”をイメージして、「ムーンパール」と名付けられたといわれています。
なるほど。平成27年(2015年)には新たに真珠素材研究棟が設立され、ますます真珠関連の研究が進みそうですね。
真珠には、まだよく分かっていないことがたくさんあります。これからも研究を進めて、健やかな美しい肌づくりに貢献したいと考えています。
真珠への探究心、そして化粧品誕生からリニューアルを続ける道のりは、興味深いお話ばかりで、あっという間の時間でした。本日はありがとうございました。
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